アーティゾン美術館に行ってきました。「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」が想像以上に楽しめたので、記録しておきたいと思います。
アーティゾン美術館の展示(5/14まで)
アーティゾン美術館では、現在3つの展示が行われています。チケットは共通で、WEB予約であれば1200円のチケットですべて鑑賞できます。
ダムタイプは前回の記事アーティゾン美術館で「ダムタイプ|2022:remap」で記載したので、今回は「アートを楽しむ」についてです。
展示のよかったところ
初心者でも楽しめるように、楽しむポイント別の展示になっていて説明も充実していたのがよかったです。絵画の説明だけでなく、本人の写真があったり、背景に描かれている風景や時代背景についても説明があり、当時の人の生活を思い描いたり実際に旅行した場所と重ね合わせて楽しむことができました。絵画好きだけでなく、歴史や旅行好きにも楽しめる展示だと思います。個人的には、大好きなフランスと日本の絵画、有名画家の作品が多いのも楽しめるポイントでした。
アートを楽しむ
Section1 肖像画のひとコマ ー 絵や彫刻の人になってみよう
「アートを楽しむ」は、3部構成になっています。まず始めは、「肖像画のひとコマ」です。
最初に目に入ったのは、青木繁『海の幸』。横に長い大きな作品です。28歳で亡くなった青木繁が22歳のときに描いた作品です。友人から聞いた大漁陸揚げの様子をもとに制作したそうです。
お隣にあるのが森村泰昌の『M式:「海の幸」第1番:假象の創造』。森村泰昌は海の幸を取り上げた10連作を描いているそうで、10連作の他の作品も気になります。
自画像も本人が描いたものと森村泰昌が描いたものが並んでいます。
エドゥアール・マネの『自画像』。マネの油彩による自画像は2点しか残されていなくて、そのうちの1点が飾られています。鏡に映った姿を描いているため、ジャケットの合わせが左右逆に描かれています。また、この頃から左足を悪くしていたため右足を軸にして体を支えているそうです。
マネの写真。
ポール・セザンヌも自画像と写真。マネもセザンヌも写真から高級そうな雰囲気を感じます。自画像だけよりも写真があることで親しみがわく気がします。
アンリ・マティス『画室の裸婦』。知っているマティスの絵画の雰囲気とは異なりますが、こんな絵も描いていたんですね。今回の企画でマティスの作品は比較的多く展示されていて、全体を通して印象に残っています。
マティス展もチェックです。
これはマルケの作品『フォーブの裸婦』のパネルです。マティスと同じ絵画教室で学んだマルケはしばしば同じモデルを使って制作していたそうです。マティスの『画室の裸婦』は、マルケの『フォーブの裸婦』と同じモデルをマルケの左側の位置から描いているようです。比べると角度だけでなく背景も違っていて面白いです。
マティスの『縞ジャケット』(1914年)と『青い胴着の女』(1935年)。
マティス『ジャッキー』(1947年)。孫娘のジャクリーヌ・マティス・モニエを描いていて、ジャッキーをモデルに連作を制作しているそうです。マティスは並べて飾ってあるすべての作品の雰囲気が異なります。
パブロ・ピカソ『画家とモデル』。みんな大好きピカソ。可愛らしい絵です。
ピカソ『女の顔』と『腕を組んで座るサルタンバンク』。
ピカソの彫刻もありました。ピカソの作品も数多く展示されていた気がします。
小出楢重『帽子をかぶった自画像』。小出楢重は体が弱かったため屋外の風景画は少なく、1926年にパトロンの支援で芦屋にアトリエを構えて最後の5年間は裸婦を中心的題材としていました。小出楢重のアトリエは、芦屋市立美術館に復元されています。
自画像の隣に小出楢重の絵に描かれているアトリエが再現されていました。帽子や筆などの道具を使って、絵の中に入って小出楢重と同じポーズで写真が撮影できるようになっています。
Section2 風景画への旅 ー 描かれた景色に浸ってみよう
ケース・ヴァン・ドンゲン『シャンゼリゼ大通り』。華やかなパリの雰囲気が伝わってきます。
フィンセント・ファン・ゴッホ『モンマルトルの風車』。ムーラン・ド・ラ・ギャレットというダンス場のシンボルの風車を描いています。ゴッホは故郷のオランダを思い起こさせるモンマルトルの風車を繰り返し描きました。
こちらはモーリス・ユリトロの『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』。
アンリ・ルソー『イヴリー河岸』の一部。人と建物がジオラマっぽくて可愛いです。
岸田劉生『街道(銀座風景)』。昔の銀座の様子。岸田劉生の実家近くから描かれているといわれている作品です。
マティスの『コリウール』。コリウールは南フランスの小さな漁村です。ここでマティスはそれまでの点描から色面での表現へと大きく画風を変化させたそうです。中央の緑色が協会、前景に広がる薄緑は浜辺、右側のピンクはヨットが浮かぶ海らしいです。説明がないと全然わかりませんが、色味は好みです。
ピート・モンドリアン『砂丘』、パウル・クレー『小さな抽象的ー建築的油彩(黄色と青色の球形のある)』、パウル・クレー『島』。
幾何学的、抽象的な絵が並んでいます。どれも理解は難しいですが、切り取って飾っておきたいかわいらしさです。
ウジェーヌ・ブーダン『トルーヴィル近郊の浜』。パリの上流階級の男女が浜辺に集まっている様子です。
拡大するとより華やかです。日傘をさして椅子に座る白いドレスの女性はフランス皇帝ナポレオン3世の妃ウジェニーだそうです。
ピエール・ボナール『海岸』と藤島武二『屋島よりの遠望』。屋島は香川県高松市の東に位置する瀬戸内海に向かって北に突き出た小さな半島です。太陽が傾きかけた志度湾と女木島が描かれているそうです。
クロード・モネ『黄昏、ヴェネツィア』。モネが67歳のときに初めてヴェネツィアを訪れ、2ヶ月ほどの滞在の間に着手した30作品のうちのひとつです。ほぼ同じ構図で描かれたヴェネツィアの黄昏があり、イギリスのウェールズ国立美術館に所蔵されているそうです。海に浮かぶのはサン・ジョルジュ・マッジョーレ教会。
『黄昏、ヴェネツィア』は、横浜正金銀行に勤め華族の家柄でもあった黒木氏がモネから直接購入したそうです。黒木氏が所望したときは一度断られたそうですが、妻の竹子氏が希望したら譲ってもらえたというエピソードが書いてありました。日頃からモネの家に出入りして関係性を築いていたからこそ譲ってもらえたのだと思うと感慨深いです。本当に貴重な一枚で、素晴らしい絵画を日本に持ってきてくれた当時の方々に感謝の気持ちです。
モネ『睡蓮』。モネは1883年の43歳頃にジヴェルニーに住み始め、1890年に家と土地を購入して、セーヌ河の支流から庭に水を引いて池で睡蓮を育てたそうです。
モネ『睡蓮の池』。モネの描く睡蓮は、実際のお庭そのもので美しいです。
Section3 印象派の日常空間 ー 近代都市パリに行ってみよう
ベルト・モリゾ『バルコニーの女と子ども』。モリゾは、印象派の数少ない女性画家のひとりです。この絵はモリゾの自宅が舞台になっていて、トロカデロ庭園、セーヌ河、シャン・ド・マルス公園が描かれていて、右側の遠くにはアンヴァリッドの金色のドームが見えます。
地図で位置関係が確認できます。絵で描かれているのが行ったことがある場所で嬉しいです。
エドゥアール・マネ『オペラ座の仮装舞踏会』。モリゾはマネの友人であると同時にマネの絵のモデルとしてもたくさん描かれています。
モリゾの物語は映画にもなっています。
ギュスターヴ・カイユボット『ピアノを弾く若い男』。19世紀後半の裕福な中流階級の様子です。窓から差し込む光によって、鍵盤や指、壁がピアノに映り込み細かい筆遣いで描かれていて、ピアノが写真のようです。カイユボットはパリの裕福な家に生まれ、モネやルノワールの作品を購入することで彼らの作品を支えたことでも知られています。
展示されていたピアノ。
感想
帰り際に、タッチパネルでその日のお気に入りを復習。
「アートを楽しむ」は副題の通り、見て、感じて、学べる展示でした。難しい技法とかではなく時代背景や人間関係なども交えての解説で勉強になると同時に、絵画や歴史、現地の状況など色々なことに興味がわいてくる内容でした。こんなに分かりやすい絵画についての説明は初めてで、シンプルに楽しめました。見終わったときに、今回見たアーティストの他の美術展や描かれている土地にも足を運んでみたいと思いました。
また、パリに行きたいという気持ちを思い起こすことができました。
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